僕のとなりは君のために
ヤバイ! 逃げろ!

足に力を入れる。が、身体が動かない。

君は映画のワイヤーアクションみたいに、空を登るような大ジャープをした。

両手は、虎が小動物を襲うときみたいに爪をたてて、肉食動物のような目をしている。

君の身体が宙で弧線を描き、僕のいる位置に確実に着地した。

「逃がさないわよ!」

蹴りが膝の裏にヒットし、僕はなんの抵抗もなく大地に跪いた。

最初から逃げられないことを思い知られた。

見上げると、君の後ろに聖なる太陽が光りを放っている。

母なる太陽。
聖なる太陽。
おぉ、太陽、あなたはなんという偉大でしょう。
聖なる光りをあまねく照らし、大地に生命を与える。

しかし、その神聖な光りすら僕には届かなかった。

昔の漫画のひとコマを思い出した。

「我が人生に一遍の悔いなし」って思わず言いそうになった。

突然、耳が痛んだ。

君につねられ、「いたっ」と情けない声が、自分の意思と関係なく口から漏れた。
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