僕のとなりは君のために
「遊園地?」

お互いが無言で電車に揺れて40分、僕たちが到着したのは横浜にある小さな遊園地だった。

遊園地といってもそんな大袈裟なものではなく、どっちかというと、ファミリテーマパークと言ったほうが近いかもしれない。

「こっち」

と君が有無を言わず、一人で歩き出した。

こっちって・・・・・・なんで遊園地?

君の横顔を覗いて、聞こうと思った。

君の眉間に皺を寄せたまま、まるで一人で怒っているようにスタスタと歩いていく。

やっぱり、聞くのはやめよう・・・・・・

風が吹いた。ほんのり塩の匂いが混じって、ほどよい温度で肌に染みついた。
太陽の光が海に反射され、僕の目を射てくる。思わず顔をそらしてしまった。

見渡すと、カップルと家族たちの姿しかない。
みんな笑顔だ。
幸せそうに笑っている。

ここは横浜なんだ、とあらためて思った。

家から近いせいか、普段はめったなことがない限り来ないのだ。

確か、最後に来たのは、一年前・・・・・・

――もうやめよう。昔のことは忘れよう。

横浜の海を見ていると、なぜか感傷が込み上げてくる。

広々とした街、広々と目の前に海がある。

なぜなのだろう、妙に寂しくなってしまう。

「何してるの? 行くよ」

君はぼうっと突っ立っている僕の横に来ると、僕の手を引いた。



少し、救われた気分になった。
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