僕のとなりは君のために
その夜、僕はなかなか眠りにつくことができなかった。

今まで聞いたラブソングが一気に頭の中でよみがえり、昔はよくわからなかった男性シンガーの歌詞もなんとなくわかるようになって、女性シンガーの歌も、『こういう気持ちもあるんだ』と理解しようとした。

僕の手に彼女の軟らかい感触が残っていた。

もう一方の手がその手に重ねて、胸に置いた。

頭の中で彼女との妄想が膨らんだ。

二人で海に行き、一緒に泳いだ。

手をつないで、海岸線を歩いた。

夕日が落ちる中で、僕たちは口付けをかわす。

え? キス?

ダメダメ!

奈美子はきっと僕のことなんてなんとも思ってないよ…………

でも、奈美子とキスしてみたい…………

そんな感じで僕は一晩、見えない敵と闘った。
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