僕のとなりは君のために
(2)

僕たちが付き合いだしたのは、ゲームセンターで出会ってからさらに一ヶ月ものあとのことだった。

その一ヶ月間、僕はほぼ毎日奈美子と行動をしていた。

ゲームセンターはもちろんのこと、彼女の趣味は映画鑑賞なので、休日になれば二人で幾度となく映画館に足を運んだのだった。



そして、僕らは付き合った。


告白したのは、彼女の方だった。驚きだった。

そういうのって、普通は男がするものだと思っていた。

だから彼女が僕に告白したあとに、あらためて僕はもう一度彼女に自分の意思を伝えたんだ。

「ごめん。こういうのって普通男がするものだよね」

「うん。そうだけど、あなたの告白を待ってたら、おばあちゃんになっちゃうよ」

奈美子は笑って僕をからかった。

「まったく、奥手なんだから」

「ごめん。でも僕は男なんだ。・・・・・・だから僕から、してもいい?」

頬が熱い。

「いいわよ」

奈美子はまるで木偶でも見るような目つきで僕を眺める。

「・・・・・・す」

僕は息を吸った。


「好きです! 僕と付き合ってください!」


目を閉じたまま、言ってしまった。

どうしてもっと気の利いた台詞を言わなかったのか、時々思い出して後悔するもあった。

だけど、あの時の僕にとって、あれが精一杯だったんだ。

こういう台詞は僕には一生言えないものだと思った。

だけど言えた。

少し自分に自信を持った。

言ったあとも、心臓がバクバクと弾いていたのを、今も覚えている。


「うん。私も好きです」


そういうと、奈美子は僕の胸に飛び込んできた。

キスもした。

初めての柔らかい感触に、僕は震えた。

キスが、思った以上に甘いものだった。
< 31 / 64 >

この作品をシェア

pagetop