僕のとなりは君のために
「そういえばよ、この間借りた金、返せるぜ」

「本当か?」

「いまは持ってねぇけどよ。もうちょっと待ってくれ」

信雄がニヤついた。

「おまえ、わざとだな」

「いいじゃねぇか。ナンパは二人の方が成功率高いんだぜ」

「嫌だね。僕には彼女がいるんだ」

誇らしく言ってみた。

信雄なら驚いて、誰だ、と聞いてくるに違いない。

こんな僕にも恋人ができたのだ。

もてるが、決まった恋人のいない信雄を鼻で笑ってやるつもりでいた。

しかし、現実は違っていた。

「ねぇねぇ彼女、俺たちと一緒に遊ばない? 奢るからさ」

信雄はまったく僕の話を聞いていない。

「いいですっ」

ナンパされた学生は彼を見向きもせず、走り去っていった。

「厳しいねぇー」

「おまえ、学校に何しに来るんだよ!」

「いいじゃねぇか。大学生活は一生に四年しかないんだぜ。いまの内に楽しまなきゃ」

「お前はあと5年あるんだろ」

「失礼なやつだな」

「事実だろ?」

「さあ、次だ次!」

「人の話を聞け!」

「おっ、あの子なんていいじゃない?」

信雄は僕を無視して、一人で歩き出した。

「ん?」

彼の先に、見覚えのある背中が見えた。

もしかして・・・・・・っ!



「やめろ、信雄! あいつだけは・・・・・・」
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