始まりはいつも
〈ハルは知っていた。

季節が巡るそのわけを。

ナツはアキに会いたくて。

アキはフユに会いたくて。

フユはナツに会いたくて。

だからハルは、本を書いた。

樹木としては無理でも、物語として、三つの季節がまた、揃うように。巡るように。

自分のしたことを、三冊の本に記して、三つの季節がそこへ宿るのを見届けると、

ハルだけは、御神木を切り落とした木刀に宿った。ナツ、アキ、フユに、

嫌われるために。

……しかし」

(キィィィン)

「清井寺、木刀が!」

[見ろよ、浮いてるぞ」
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