【完】君にただ聞いてほしくて
「…嘘でも『後ろ乗ってけば?』とは言わないんだね」
「乗せてやってもいいよ?」
「えっ」
「嘘だしぶあーっか」
「ムカつくわあー」
「お前を後ろに乗せるぐらいなら
通りがかりのおっさん乗せた方がマシだっつーの」
「おっさんそれ困るんじゃないかな」
「まあ、ちょっと首傾げるぐらいだろ」
「素振りが可愛いなオイ」
12月の風は冷たい。
あたしも中野も首に巻いたマフラーが手放せない。
「う゛ー。さびいー」
「女っ気も色気もねえな。
そりゃ先輩も断るわけだ」
「食い気忘れてるよ」
「心底どうでもいいわ」
なんでよ、食い気ある女って思われたくないじゃん。
そう考える時点であたし超乙女だよね。
「いいんだ、先輩の事は。
なんか他に好きな人いるとか言ってたし」
「…」
「そりゃさ、一時は
こんなあたしでも付き合ってくれるかもとか淡い期待もしたけどさ」
「何この人語り始めたよマジつらい」