微少年
微少年
「おい、何度言ったらわかるんだ。もう一度、今言ったところからやり直しだな」
「はい、すみません」
僕は自分の席についた。
すると、いつもの柔らかい椅子が固くなっていた。しかし、居心地は悪くない。
そして、デスクのパソコンを操作しようとすると、前には黒板が塗り壁のように立ちはだかっていた。横には先生だろうか。しきりに生徒に質問する。僕はそれを聞いていた。
「今、電線に十二羽の小鳥が止まっています。最初は八羽止まっていました。では、小鳥の数は最初と比べて何羽増えたでしょう」
はたしてこれは小学校一年生の文章問題だろうかと思いながら手を挙げた。すると、周りにいる生徒たちも手を挙げている。
僕はこれだけいるから、他の子が答えてくれるだろうと思って手を引っ込めた。
すると、今度は先生が僕に向かって言った。
「あなたは素晴らしい。どうしてこんなに難しい問題が解けるのですか。先生だってお手上げなのに」
僕は先生が何を言っているのかさっぱりわからなかった。
「どういうことですか?」
「あなたはさっきまで私の代わりにみんなに高校の微分・積分の問題を出して自分で解いて見せていたではないですか。ほら、ごらんなさい」
先生は黒板を指差した。そこには、わけのわからん文字と数式が並べられていた。
「これを僕が……ですか?」
「そうですよ」
「はぁ……」
「はぁ、だと!!
それが上司に対する言葉遣いか!」
いつの間にか、先生の優しい顔が鬼瓦の係長の顔に変わっていた。
あの日のことは今でも忘れない。
そして、今でも家に帰ると高校数学の難易度マックスの参考書を毎日読んでいる。計算もしなければ、数式の意味も考えないでただ文字と数式を追って読んでいるだけである。
それになんの意味があるのかわからぬまま……。
「はい、すみません」
僕は自分の席についた。
すると、いつもの柔らかい椅子が固くなっていた。しかし、居心地は悪くない。
そして、デスクのパソコンを操作しようとすると、前には黒板が塗り壁のように立ちはだかっていた。横には先生だろうか。しきりに生徒に質問する。僕はそれを聞いていた。
「今、電線に十二羽の小鳥が止まっています。最初は八羽止まっていました。では、小鳥の数は最初と比べて何羽増えたでしょう」
はたしてこれは小学校一年生の文章問題だろうかと思いながら手を挙げた。すると、周りにいる生徒たちも手を挙げている。
僕はこれだけいるから、他の子が答えてくれるだろうと思って手を引っ込めた。
すると、今度は先生が僕に向かって言った。
「あなたは素晴らしい。どうしてこんなに難しい問題が解けるのですか。先生だってお手上げなのに」
僕は先生が何を言っているのかさっぱりわからなかった。
「どういうことですか?」
「あなたはさっきまで私の代わりにみんなに高校の微分・積分の問題を出して自分で解いて見せていたではないですか。ほら、ごらんなさい」
先生は黒板を指差した。そこには、わけのわからん文字と数式が並べられていた。
「これを僕が……ですか?」
「そうですよ」
「はぁ……」
「はぁ、だと!!
それが上司に対する言葉遣いか!」
いつの間にか、先生の優しい顔が鬼瓦の係長の顔に変わっていた。
あの日のことは今でも忘れない。
そして、今でも家に帰ると高校数学の難易度マックスの参考書を毎日読んでいる。計算もしなければ、数式の意味も考えないでただ文字と数式を追って読んでいるだけである。
それになんの意味があるのかわからぬまま……。