毒草彼女 -ポトスで始まる恋ー
非常にまじめな顔で、瑞希は話を続けた。

「ですが、ホウセンカは、全草が風邪に効く鳳仙、種子は魚肉中毒に処方される、急性子と呼ばれる、生薬でもあるんです。」

「生薬ってことは、薬だよな?」

「はい。私が昼に抱えていたアサガオもそうです。下剤に使われますが、どちらも専門家の処方が必要になります。」

「薬剤師、とか?」

弟が薬剤師だって、きのこ博士が話していた気がする。


「アサガオもホウセンカも、子供に身近な植物ですから・・・それを知っている大人が、教えないといけません。」


「学校じゃ、教えてくれないもんな。」


瑞希は頷いてから、ゆっくり俺の方を向いた。
見つめ合って、真剣な目で。

別れでも告げられそうなぐらい、その目は真っ直ぐ俺を射抜く。

俺の鼓動が、耳に届きそうなぐらい、大きく脈打った。





「私、会社を辞めます。」




「え・・・?」





瑞希の目には、迷いが無い。


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