毒草彼女 -ポトスで始まる恋ー

おめでとう。

そう、言いたいのに。

たった、一言、それだけなのに。


「多分、そういうタイミングだったんだと思います。元カノさんも、これで少しは溜飲が下がるでしょう。」

「それじゃ、あいつを増長させるだけだ。」

「それで社内が平和になるなら、いいと思います。」


瑞希は、笑った。

なんでそんなに、穏やかでいられるんだろう。
俺には分からない・・・同じ会社に居たいと思う気持ちは、無いんだろうか。

知らず知らず、拳を握りしめていたらしく、爪が手のひらに食い込んでいた。




・・・いや、大人になろう。


ホウセンカで遊んだ、あの頃には帰れないんだ。


だから、俺は。
深呼吸をしてから、手のひらを、ゆっくりと開いた。


「おめでとう。」


ようやく、肩の力が抜ける。
まだ二次試験もあるが、瑞希なら大丈夫な気がした。

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