毒草彼女 -ポトスで始まる恋ー
気付く様子は微塵もなく、少しだけ近付いてみる。

瑞希は手に持ったB5サイズぐらいのスケッチブックに、熱心に目の前の白い小さな花を描いていた。

絵、上手いな。

鉛筆だけで書いているのに、まるで写真みたいだ。
あまりに真剣なその後ろ姿を、俺はしばらくじっと見ていた。

声をかけるには、申し訳ない気がしたから。


やがて瑞希が丸くなった鉛筆を換えようと、筆箱に手を伸ばした時。
集中が切れたのか、突然振り向いた。


「い、伊東さん?」

「ど・・・どうも。」


ほんとに突然の事だったから、俺まで驚いてしまう。

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