毒草彼女 -ポトスで始まる恋ー
今ここで俺がキスをしても、嫌がらせとは取られない(と、思う)。

距離が縮まったことに気付いた瑞希は、少しだけこっちを向いてから、赤くなって目を顔ごと逸らした。

彼女の緊張が、俺に移る。

あー、もうほんと、俺ら初々しすぎるだろなんて、思ったり。
そんな年齢も、時期も、とっくに過ぎたのに。
彼女の反応ひとつで、俺もつられて10年ぐらい若返ってしまう。

乾いた口を癒すように、ビールを飲んだ。
苦い味が口に広がって、炭酸と一緒に喉に流れていく。
いつの間にか食べ終わった瑞希が、俺と同じようにチューハイの缶を傾けていた。


距離を詰めたのに、あまり深い意味は無かったのに。

ただ、少し近付きたかっただけだったのに。

こんなに緊張されると、ほんとどうしていいか分からなくなる。


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