毒草彼女 -ポトスで始まる恋ー
瑞希は突然の言葉に驚いたのか、眼鏡の奥の目を丸くして、まばたきを数回繰り返した。

取り乱したところはやっぱり見せたくないので、あくまでも普通に、普通に‥‥

「まだ今言い出したばっかで、日にちは未定なんだけどさ。」

「そうなんですね。」

予定もなにも、計画さえたっていないので、何ともいえないくせに‥‥何故誘う、北村よ。

楽しそうですね、と、瑞希はいつものように笑った。

残念ながら、今日はこれだけしか会話が出来なかった。

仕方がない。

俺の後ろには、まだまだたくさんの社員が並んでいる。
それに、デスクに帰れば、俺も北村も仕事は山積み。
何時に自宅帰れるかとか、せめてメドが立てば電話するとかの約束もできるんだが、それすら先行き不透明。
残業時間にはやり過ぎないための規制があるものの、今月はまだ多少余裕がある。

なら。

出来る限りの努力で早く終わらせて、非常識ではない時間なら電話しよう。

勝手に腹を決めた俺は、気合いを入れて仕事にかかった。
多分、今だかつてない速さだ。

グループのメンバーの驚いたような視線を感じつつも、俺はなんとか21時に帰れる目星をつけ、さっさと会社を出ていった。
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