愛シテアゲル
第1部 touch and go
1.今夜おいで。(1)
彼は初恋。子供の時からずっとずっと恋してきた。
当然、片想い。大人の彼を追うだけの……。
彼は、車屋を経営する父親の部下。
会社は自宅と併設しているので、彼の姿は毎日見てきたけれど。
十歳年上の彼には追いつかない。彼は先に行ってしまう。
そう、恋人と結婚だって……。きっとしてしまう。
でも。お兄ちゃんは独りになってしまった。
彼女が他の男性と結婚することを決めたから。
いつもは静かで落ち着いてるお兄ちゃんが、その夜、青いMR2で哀しみを振り払うように遠くへと走ろうとしていた。
おねがい。連れていって。お兄ちゃんをひとりになんかしない。私、一緒にいる!
助手席に乗り込んで、彼の隣にいた。彼と一緒に、その哀しみの果てまで、ついていった。この道の果ては、瀬戸内海を照らす大きな灯台がある『岬』だった。
それから二年。
小鳥は大学生。もうすぐハタチ。
彼が言った。
『小鳥の誕生日まで、あと何日?』
ハタチになるまで待っていた。
子供だった小鳥がまだその時、本当に俺をまだ見てくれるなら……。
ハタチの誕生日を迎える、五日前。
お兄ちゃんからの突然の告白だった。
その夜。大人のキスを熱く教えてもらい、柔らかい肌にキスの刻印もされた。
乳房の下に、彼の唇の痕。大人の、愛し方……。
彼に通じた想い。コドモの時からの想い、『初恋』だった。
彼は初恋で、初めての恋人。なにもかもハジメテの……。
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