愛シテアゲル
矢野じいも続ける。
「そうだな。これまでやられてきた客の車は、せいぜい幅寄せでこすったか、煽られてハンドル操作を誤って自滅衝突だったもんな」
そして清家おじさんも、兵藤おじさんも。
「なのに、エンゼルにだけ当たりに来た。確かに不自然だ」
「ハンドルを切った小鳥にわざと合わせるようにして、ぶつかってきたらしいしな」
白のランエボも、今頃修理をしているはず。二人の整備部長が『知り合いの整備士、整備店に問い合わせてみよう』と話し合う。
そんな大人達の話を聞けば聞くほど、小鳥は昨夜の恐怖も相まって震え上がる。
そんな恨みを買うような走り方をしていた覚えもないし、白のランサーエボリューションXなんて記憶にもない。
そんなことはもう父もわかっているのか、見覚えあるかどうか確認もしてこない。
「ともあれ。エンゼルを直すことからだ。翔、ライトの修復を頼むわ」
「はい。社長」
へこんだバンパーに激しく破損しているライトカバー。翔兄も昨夜の小鳥のように、エンゼルに跪き壊れたライトにそっと手を当て俯いていた。
元々はお兄ちゃんの愛車。手放したとはいえ、うんと悔しいだろうと小鳥も思う。引き継いだ小鳥よりずっと長く乗っていたのだから。