愛シテアゲル
小鳥にとって、二十歳の誕生日にくれたプレゼントは、この『合い鍵』だと思っていた。小鳥にプレゼントをするなら『カモメがいい。小鳥じゃなくてカモメ』。『シーガルのオーナーになるのが夢なんだろ。だからカモメ』そう思って、翔兄が時間をかけて探してくれた貝細工のカモメ。そのカモメがぶらさげている銀色の鍵の横に、銀色のリングが光る。
「これなら、いつも持っていられるもんね」
そういえば、翔からも『指輪どうした』とも聞いてこない。プレゼントを身につけてくれていなくて、がっかりしたりしていないか。でも……。この前の倉庫での様子だと『カノジョがプレゼントをどうしているか』よりも『カノジョの車をぶっ潰した野郎、許さねえ』――という状態のようだった。
あんなに怒ってくれていただなんて。
エンゼルは、俺と小鳥の愛車だ。
嬉しかった。小鳥を傷つけた男に怒りを抱き、そして、同じ車に乗った者同士、大切に思ってくれて。
唇がすりきれたような……、あのヒリヒリするキスの感覚がまだ残っている。
ちょっとずつ、ちょっとずつ。自分が彼にとって女であるのだと実感がわいてくる。
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