愛シテアゲル


「っていうか、小鳥オマエ、なんで俺のスカイラインに乗らないんだよ」
「だから。前から言っているじゃん。重いの、父ちゃんのR32。なに、あのハンドル!」
「なんなら。オマエが乗る間だけ軽く調整してもいいんだぞ。オマエの手に合わせたハンドルにつけかえてやるし」

 でも小鳥は首を振った。

 普段は絶対に乗せない親父の愛車なのに、子供にたまに貸すことになり『どっちに乗りたいか』と尋ねて、毎回毎回、母の愛車を選ぶのが気にくわないらしい。だって。そのスカイランの方が、おっかない車を引き寄せそうなんだもん。

 父ちゃんの黒いスカイラインは、装甲車。重厚なオーラを漂わせ、龍星轟社長の威厳を放っている。それに攻撃してくる走り屋がいるとしたら、かなりのチャレンジャー。強気で向かってくる奴しかいない。

 だから。そういう車をひっかけやすいって。乗っている本人は自覚していないよう?

 たぶん。出会ったら力技でなぎ倒すか、ぶっちぎっているんだろうなと、娘の小鳥は父の豪快さを思い浮かべる。

 父ちゃんを本気にさせたら怖いけど、あのランエボと真っ向対決したら……。惨劇を招きそうで小鳥は震えた。

 

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