愛シテアゲル
真っ直ぐなところは、父親の真鍋専務に似たのかなと小鳥は思っている。それに最近、背丈が伸びて、男っぽい骨張った輪郭になってきた大洋兄貴は、顔は母親似なのにやっぱり男だからなのか、横顔が真鍋専務に似てきたなと感じることが多くなった。
「紅茶こさえるから。そこ座っていろ」
二宮宅、庭の奥に菓子作り専用に立てられた『二宮スイーツキッチン』。この果樹園の素敵なところは、丹誠込めて作られる畑の柑橘が、このキッチンで素晴らしいスイーツに生まれ変わること。
ここから企画されて、島から街の真田珈琲で売り出されヒット商品になったものが多い。そのスイーツも、ここの二宮家のカネコおばあちゃんをはじめとしたお嫁さん達がごくごく日常的にこしらえてきたというもの。
ここだけ、イギリスのアフタヌーンティの農園に紛れ込んだかのような錯覚を起こすほど。ゆったりと甘酸っぱい匂いに包まれ、小鳥はここも大好きだった。
ここに遊びに来ると、漁村のおじいちゃんのところに負けないおいしいお茶と、ここでしか食べられない極上のスイーツをご馳走してくれる。いつだって。
そして今日も。農作業着の背が高い美男が、てきぱきとお茶を淹れる姿。
この畑とキッチンは俺が育ったすべて。彼はいつもそう言う。
小鳥が漁村のおじいちゃんが大好きなら、大洋は二宮のひいおばあちゃんとおばあちゃんが大好き。
そういう育ちや気持ちがそっくりで、本当に小さい頃から気が合っていた兄貴。