愛シテアゲル


「どうしたの。大洋兄」
「あのな、オマエ……。璃々花(りりか)からなんか連絡もろてないか」
「え。璃々花姉さんから? ううん。私もしばらくは音沙汰ないよ。だって海外で修行中だし」
「そっか。なら、ええわ」

 璃々花お姉さん。真田珈琲の一人娘。つまり真田珈琲将来の四代目。会長のお孫さんで、美々社長の娘。小鳥より二歳年上で、大洋にとっても一歳とはいえ年上の女性。

 彼女も幼い頃から、この島で遊んだ一人。でも、皆より年上の落ち着いたお姉さん。こちらも家業の影響で、ただいまヨーロッパでカフェの勉強中。なかなか日本に帰国しない。

「連絡があったら教えるよ。大洋兄のことも伝えておくね」
「別に。俺のことはええから。ただ、元気なんかなと――」

 いつも陽気な兄貴が、気恥ずかしそうにして、潮風の瀬戸内へと遠く目線を逸らしてしまう。

 彼も。好きなんだ。諦められないんだ。
 小鳥はそんな彼の気持ちを知っていて、でも、触らないようそっと見守っている。
 これもまた、私にそっくり。子供の時からの恋を大事に大事に心の箱にしまっている。
 そんなところも一緒。



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