愛シテアゲル



 見ていたらわかる。スミレは奥手な女の子で男子の前ではそれほど積極的ではない。むしろ警戒して一歩引いているところがある。

 だけれど、聖児と向かうと外では見せない笑顔で快活に話したり、ふざけあったりしている。聖児も同じく。高校入学当時はいきなり茶髪に染めたりして気怠そうなヤンキー男を気取っていたが、スミレと出会った途端に黒髪に戻し、それからは硬派な強面男として一目置かれるようになっていた。

 外では無愛想。人見知りが災いしてそれが誤解を招くこともあるが、自宅ではおちゃらけたやんちゃ坊主。外ではなかなか地を出せないふたりだからこそなのか、龍星轟という場所で会っては、楽しそうにしている姿を姉として見てきた。

 それは親友の花梨も同じで、彼女も龍星轟には良く出入りしているので、こちらもいつのまにか『姉心』が芽生えているようだった。

「ちょっと。他のサークルはそうかもしれないけど、うちは絶対にダメだからね。そう決まっているの!」

 二、三人の男子がスミレに突き出していたチューハイグラスを花梨が片っ端から奪ってテーブルにおいた。

「なんだよ、いつも邪魔しやがって。じゃあ、花梨が飲め」

 男達が飲め飲めと花梨を煽る。こういうことも毎度のことで、小鳥はいつもここでハラハラしている。今夜だって自分がハタチになったことで、あんなふうにされるんだと案じていたそのままを花梨が押しつけられている。

 だけどそこは強気の『花梨ちゃん』。強引に別の話題へ持っていく。

「ねえねえ、そんなことより! 国大にドライブサークルができたってホント? 一年生しかいないのかな。ねえ、小鳥ちゃん知っている?」




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