愛シテアゲル
ワーゲンバスがあるカーポートの前にフェアレディZを駐車させる。それだけで玄関の灯りがついた。
このエンジン音が聞こえると、おじいちゃんはすぐに気がついてくれる。滝田の誰かが来たと。
玄関のドアが開き、白髪の大柄な老人がひょっこり顔を出す。
「じいちゃんー。小鳥だよ!」
運転席の窓を開けて、手を振った。
おじいちゃんの顔がにっこり優しく崩れる。
「小鳥、いらっしゃい」
ドアを開けて、玄関から出てきてくれた。
「今日、興居島(ごごしま)の果樹園に行って来たんだ。珠里おばさんからもらってきたよ」
後部座席にある柑橘篭を取りだし、おじいちゃんに差し出す。
「ありがとう。そろそろお願いしようかと思っていたけれど、いつもお願いする前に気がついてくれて。本当に助かるよ」
「朝、父ちゃんがそろそろだから、行ってきてくれって」
「英児君が。そうか」
「珠里おばさんも、マスターによろしくって。大洋もおじいちゃんのこと元気か気にしていたよ」
レモンに大玉のオレンジやキーウィーなど、島の果物が盛られた篭を見下ろし、マスターがちょっと寂しそうに微笑む。