愛シテアゲル


「ああ、大洋にもしばらく会っていないな。果樹園のお手伝い、頑張っているみたいだね」

 本当はおじいちゃんも、あの素敵な果樹園に行って、あの空気を吸いたいんだな――。
 小鳥はそう感じた。

「じいちゃん。今度は私と一緒に行こうよ。珠里おばさんと大洋が喜ぶよ!」

 元気に言うと、おじいちゃんも笑顔になってくれる。

「そうだな。小鳥の運転で連れていってもらおうかな」

 昔は逆だった。島に遊びに行った時におじいちゃんもやってきて、そこの水色のワーゲンバスに子供達をいっぱい詰め込んで、島の海水浴場まで連れて行ってくれた。しかもおじいちゃんが一人で子守りをしてくれて――。

 小鳥に、聖児に玲児。真鍋の大洋に、蒼志。そして真田の璃々花姉さん。子供達みんなの優しいおじいちゃんだった。そして親たちにとっても、伊賀上マスターは『お父さん』でもあった。

「まだ冷えるね。さあ、おはいり」

 海辺のモダンな家にお邪魔する。



< 151 / 382 >

この作品をシェア

pagetop