愛シテアゲル


「父ちゃん、もしかして……。もしかして!」

 ヤダ、そんなのヤダ。どうしてこんなことになったの?
 認めたくない小鳥の顔を見つめ、社長席に座り込んでいる英児父が無情にもそれを言ってしまう。

「ああ、そうだ。間違いない。龍星轟の男達の車と判ったらぶっ潰す覚悟でやっている。狙われている、確実に」

 ついに、ついに、確定してしまったようだ。白のランエボの狙いは『龍星轟』。
 だから男達が朝から何とも言えない顔を揃えていたのだろう。

「どうして、そんなこと。ライバル店? そんなお店、ここらではないよね。だって、父ちゃんや武ちゃんがちゃんと……」

 横の繋がりだって大事にしてきたはず。持ちつ持たれつ、地方の中小企業だからこそ、互いに迷惑にならないように努めてきたはず。そういう付き合いの中で、こんな恨まれるようなことなどいままでなかったはず。

 その理由がわからない……。

 誰もがそう思っているのだろう。だからこそ、これからあのランエボに対してどうすれば良いかわからなくなってしまったのだろう。

 でも。こんなこと、いつまで繰り返されるの?
 いつまでアイツを避けていなくちゃけいないの? こんなの我慢できない。

 ついに小鳥は父親に向かって言い放つ。

「私も三坂に行く。私が囮(おとり)になる!」

 わ、龍の子がロケット発射秒読み前――。おじさん達が面食らう。
 それだけではなかった。

「いや、小鳥。俺がやる」

 いつもは控えめな翔が、張り合うように小鳥の隣に並んだ。

「彼女のMR2、俺に運転させてください」

 え、どうして? どうして私のMR2を運転して囮になろうだなんて言い出すの? 私がそうしたいのに。

 英児父は小鳥と翔を交互に眺め、即答はせずなにを思っているのか。




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