愛シテアゲル

11.車のように愛して。(1)



 私が囮になる!
 いえ、俺に彼女の車を運転させてください。
 

 いつも後先考えずに、気持ちだけで突っ走ってしまう小鳥を止めるかの如く。翔も『俺が囮になる』と小鳥の前を遮った。

 無茶をする小鳥を止めるため? いつも気持ちだけですっ飛んでいく子供のような彼女を、大人の彼がそれとなく諫めている? 私、また子供ぽいことしたのかな? ふと勢いが止まってしまう。

「どちらも却下だ。囮は使わない。いいか、小鳥。勝手なことすんなよ。龍星轟の俺達は俺達でいろいろと考えて、車で詰め将棋しているんだからよ。乱入して台無しにしたら勘当する」

 そこまで言われ、小鳥は後ずさった。父親の凄むガン飛ばしに震え上がる。

「わかったな、小鳥。これでいいだろ、翔。この娘に余計なことは父親の俺がさせねえから、お前まで無茶なこと言い出すな」

 お騒がせ娘のやることに引きずられるだなんて、お前らしくない――。父が静かに付け加えた。

 いつもはなにごとにも落ちついているお前が、どうしてそうなる。今度は言葉にせず、眼だけで父がそう言っている。小鳥にはそう見えた。



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