愛シテアゲル
父は薄々勘づいている。娘とこの男が深い関係になり始め、やんちゃな娘が考えなしに飛んでいく方へと男も引っ張られてしまっているんだと警戒しているようだった。
もしかして子供っぽい自分は、お兄ちゃんのためにならない?
「いえ、社長。お嬢さんが参戦するしないとは別に考えていることがあります。まさかここでお嬢さんが俺の考えの『邪魔』をするとは思わなかったので、つい遮りましたが……」
え、『別の考え』?
小鳥と英児父は似た顔を揃え、一緒に驚きの目を彼に向けていた。
しかもお兄ちゃんが『お嬢さんが邪魔なことをした』なんて言った! 彼には彼なりの深い考えが前々からあっての『俺がエンゼルに乗りたい』だったのに対し、やっぱり私ってただ突っ走るだけの子供っぽいオバカさんだと思われたのかと、小鳥はショックを隠せない。
「なんだ翔、言ってみろ」
「その前に。修理が終わったエンゼルの試運転を俺にさせもらえませんか」
「いや、その前に。社長の俺に思っていることを報告してくれないか」
社長の俺に言わなくてはいけないことを告げず、自分の望みだけ『その前にさせろ』という口の利き方に、父が多少むかいているのが小鳥にはわかった。
しかし、父との付き合いも長くなってきた翔もお構いなし。
怒りの炎が点火されたら若僧の自分なんてあっというまに踏みつぶされる怪獣的上司だとわかっていても、翔も毅然と英児父に真向かっている。