愛シテアゲル
「昨夜。メールもちゃんと見た。返信できなくてごめんな。マコがNSXをぶつけたという連絡を、俺に一番にくれたもんだから、桜三里に向かっているところだったんだ」
「わかっている。朝、マコちゃんの怪我と事故を知って、だからお兄ちゃんは返信できなかったんだって判ったから」
「それなら、なにを拗ねているんだ」
お兄ちゃんだって、いつもなにを考えているの。『俺の考えの邪魔』って……。
それを言うことすら子供っぽいのかと、小鳥は沈黙を保った。
MR2のエンジンがさらに高く鳴り響いた。
「俺みたいな男だと、女の子が考えていること……わかってあげられないのかもな。なんか、ずれていて、でも小鳥がそれを笑って何ともない顔で許してくれている気がする」
思ってもいない言葉が彼から出てきて、小鳥は唖然とした。
「ずれているって? お兄ちゃんのどこがずれているの?」
MR2の速度が少し落ち、エンジンの唸りも鎮まる。
車の音で小鳥は感じ取った。もどかしくてアクセルを踏む、思い違いだったのかと知ってアクセルを緩める。もしかして、彼も……若い小鳥のことがわからなくて、もどかしく思っている?