愛シテアゲル
「俺らは、酒飲んでも明るく楽しい男達だけど。あいつらは車だけ、だろ」
「気の利いたことしてくんねーぞ。ああいう奴らは」
それ言い過ぎと小鳥は言い返したいが、『既に言い返せない状況』になっているのは内緒の話。
後輩の小谷圭太朗はまさにそういう『勉強は出来るが、異性には奥手な真面目男子』、小鳥と花梨には慣れているが他の女子数人を連れていくと、しどろもどろな男子になってしまい、女友達の反応はいまいち。ここの彼等が言うように『うーん、車を中心としたおつきあいはちょっとー』という結果は既に出ていた。
まあ、さっきのは花梨が彼等の気を逸らすために大袈裟に話題を変えただけのことで、結局、サークルとしては彼等とこうして組んで、メンバー達からの不満はなくうまく交流が成り立っていた。
「そろそろ、デザートが食べたいです。私、白玉あんみつにしようかなー」
今度はスミレがやんわりと、違う流れに変えてくれる。気の弱い女の子の顔をしているが、本当の彼女は気が利くし、機転も利く。易々男の誘いにはなびかない、お育ちも良いが、芯もあるしっかりした意志を持っていることに好感を抱いている男子も多く、だからいつも『男慣れしていないスミレをついついからかっちゃう』なんてなってしまうようだった。
「じゃあ、デザートのオーダー取るよ。アイスの人ー」
いつものように、小鳥がとりまとめる。
最後の支払いも、幹事をしてくれた花梨とまとめて、今夜はスムーズにお開きに。
駐車場でも気を抜かない。悪ふざけも盛り上げるためと思えば目をつむれるし、本当はしっかりした男子達だとわかっている。普段の彼等は段取りも良く、相談に乗っても的確に答えてくれる男ばかり。だけれどそんな『しっかり男子』でも酔っていたら別。勢いで『わけもわからず、乗ってしまった。運転してしまった』となることだってあるかもしれない。そこを監視するのがグループのリーダーとしての務め。