愛シテアゲル
「私は嬉しかったよ。MR2で海までぶっ飛ばしたいと思ったけれど、やんちゃな走りをしないで帰るってお兄ちゃんと約束したから、我慢して帰ったぐらい」
「海までぶっ飛ばしたいって……。小鳥らしいな」
やっと彼が声を立てて笑ってくれた。
「ごめんな。遅くなって。こうするべきだった。俺から小鳥に――」
彼が小鳥の指先を優しく伸ばす。そこへ銀のリングを近づけた。
その指が、左手の薬指――。その指を選んでくれた彼の気持ちを知って、小鳥はもう泣きたくなる。
すっとその指に銀色のリングがはめられた。
サイズもぴったり。どうやって小鳥のサイズを知ったのか。
他の女の子より背丈がある小鳥は、なんでも少し大きめサイズなのに……。
「ああ、よかった。サイズも合っていた」
「どうやってわかったの?」
「店にあるサイズ見本のリングを触って、小鳥の指はこれだなって」
「すごーい! でも……それも嬉しい……」
お兄ちゃんの指先が、私の指先の感触を記憶してくれているってことだよね――。
ちゃんと小鳥の身体のことを感じ取ってれている証拠。
「龍星轟で恥ずかしいなら、外していても構わないからな」
小鳥は首を振る。
「ううん。もう外さない。せっかく、翔兄がはめてくれたんだもん。ずっとこのままがいい」
どうして良いかわからなかったのに。
見られて何か言われたらどう対応すればいいか困惑していたのに。
大好きな彼から指につけてもらったら、やっぱりもう外したくない。
このまま堂々としていたい。彼の手から指につけてもらえただけで、こんなに強い気持ちになれるだなんて――。