愛シテアゲル
はだけた胸元も彼が優しく直してくれる。
最後にもう一度キスを――と、ふたりで唇を近づける……。
ギュウンとMR2の側をかすめるように走り去っていくエンジン音。
悲しい性、激しいエンジン音を耳にすると、キスもどこへやら。
二人揃ってそちらへと目線が奪われてしまう。
だが翔と小鳥は共に顔色を変えた。
走り去った車がひとつ向こうの海岸線のカーブを曲がっていくところ。
赤いテールランプに、大きな白いウィング……。
「お兄ちゃん、あれランエボ……だよね」
「白のランエボだ。小鳥が見たヤツなのか」
「うん。ばかでかいウィングだったから覚えている!」
揃ってシートに身を沈める。急いでシートベルトを締めると、翔はすかさずエンジンをかけた。
「しっかり掴まっていろ!」
「わかった!」
タイヤを鳴らし、MR2も車道へと急発進する。
「くそ。こっちの海岸線も流していたか」
MR2のエンジンが激しく唸る。暗い海岸線、ランエボが消えたカーブを曲がった時、翔が急ブレーキを踏んだ。
前につんのめりながら、小鳥も見た。白のランエボが方向転換をして、こちらに戻ってくる。向かってくる。