愛シテアゲル
仕事で見せている以上のクールな面持ち。一重の涼やかな目元から放たれる眼差しは、夜明かりの中、ぎらりと研ぎ澄まされている。
古い民家が並ぶ、寺町、町はずれの道。狭い車道をMR2は順調に進んでいく。そして後ろを振り返ると、ランエボがいない――。
「お兄ちゃん。ランエボが見えなくなっちゃったよ。これじゃあ、アイツ、諦めて追いかけてこないよ」
「大丈夫。絶対に追いついてくる」
また奇妙な気持ちになる。なぜそんな断定的に言い切れるのかと。
その通りに、翔が少しスピードを落として走行すると、向こうが必ず追いついてくる。また後ろに白い車が見えた。
「来たよ」
「アイツも、今夜は絶対に逃がさないと思っているんだろう」
ほら。また――。まるで向こうのドライバーの気持ちを手に取るかのように言い切る。
不可解で釈然としない小鳥は、ますます険しい横顔で神経と尖らせている翔からなにかを知ろうと見つめてしまう。
その視線に、翔が気がつき、ちらりと横目で小鳥を見た。その目を信じて小鳥は問う。
「お兄ちゃん、アイツが誰か判ったとか……」
彼の目線がフロントに帰り、黙ってしまう。だけれど、しばらくすると大好きな八重歯の笑みを見せてくれた。