愛シテアゲル
特に今夜は、国大生を仕切っている『リーダー先輩』が欠席だった。『小鳥のハタチの誕生日会なのに、ごめんな』と前もってメールが来ていた。
彼等も四回生で、就職活動が既に始まっている。その予定でどうしても本州に帰らなくてはならなかったようで、男子をしきってくれる彼がいないから、小鳥が今日は目を配っている。
前もって決められていた運転手の車に、お酒を飲んだメンバーが滞りなく乗ったのを見て、小鳥もひと息。自分もMR2へと向かった。
だが、小鳥は花梨を探した。彼女に翔とのことを報告しようかどうか迷っていて、ついにこの日になってしまった。
お開きの後、二人きりになったら、今度こそ、花梨ちゃんに報告しよう。五日前、ひとりで岬に行くと言った夜に、翔兄が追いかけてきてくれて、両想いになれたんだよ。それで、今夜……、初めて彼の部屋に行くんだけど……その、もしかして、あんなことになるんじゃないかと……。ねえ、花梨ちゃん、どうしたらいい。花梨ちゃんはどうだったの。恥ずかしいけれど、そう聞こうと決めていた。
だけれど、小鳥の背後、車のドアがバタリと閉まる音がした。
振り返ると、サブリーダーである勝部先輩のレガシィーツーリングワゴンの助手席に花梨が乗っているのを見てしまう。
「か、花梨ちゃん」
ここのところ、彼の隣にいる花梨を見てしまう。他の女子メンバーには見られないよう、最後にふたりが乗り合わせているのを何度も見た。まるで小鳥には見られても平気とばかりに……。