愛シテアゲル


「社長に『俺の考えがある』と言っただろう」

 うん、言っていたね――と小鳥も頷く。
 そしてその考えを翔兄は確証がないからと誰にも言おうとしなかった。

「たぶん。あの白いランエボは、『走り好き』ではない。あのランエボに一時的に乗っている『にわかの走り屋』だ。そして、ほんとうに狙っているのは『この俺』だ」

 唐突に出てきた言葉に、小鳥はとてつもなく驚き硬直する。絶対的上司である英児父が促しても言わなかったことを、先に小鳥に言ってくれた驚きも――。

 いや、そんなことより!

「ど、どうして翔兄なの!? だって、あいつが最初にぶつかってきたのは、私のエンゼル……」

 そこでハッとする。小鳥も気がついた。

「え、もしかして……。翔兄の車だと、思っていたとか……?」

 翔が頷く。

「そうだ。小鳥が乗っているエンゼルだから、ぶつかったんじゃない。俺の元愛車だからぶつかってきたんだろう。つまり、向こうはこのMR2のナンバーを覚えていて、このMR2だから襲うと決めていたんだ」

 さあっと小鳥は青ざめる。どうしてお兄ちゃんが狙われるの? 
 じゃあ、さっきもぶつかってこようとしたのも、お兄ちゃんが運転席にいたから? 
 いまも執拗に追いかけてくるのは、お兄ちゃんが運転している車を見つけたから?



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