愛シテアゲル
剛力のR32GTRに後部を煽られ、白のランエボが致し方なくMR2の正面へと滑り込んできた。
だが英児父はそのまま対向車線を使って、白いランエボの真横に並んだ。
「と、父ちゃんが。あんなこと……」
いつもは絶対にやらない走り方だった。
卑怯なランエボがやった対向車線を塞ぐ横付け。それを父がやっている。
「よほど頭に来ているんだ。血が上っている。いやでも、社長のことだから……もしかして……」
窮地を救ってもらった翔もやや愕然とした面持ちでスカイラインを見据えている。だけれどその眼に不信はない。信じている眼差し。
「父ちゃんは無線でなにか言っている?」
翔が首を振る。いま英児父にはランエボしか見えていないのだろう。
ここで会ったが百年目、ランサーエボリューションと一対一のタイマン勝負、そんな気迫が走っている姿を見ているだけで伝わってくる。
「いや。社長は冷静だ」
翔が言い直した。