愛シテアゲル
「見ろ。ぴったり横付けはしているけれど、幅寄せはしていない。本当にぴったり繋がれたようにランエボに合わせて走っている」
「……本当だ」
白と黒の二台は互いをトレースするように綺麗に並んで走っている。
「あれって、実際はすごく鬱陶しいんだ」
「わかる。なにをされるわけでもなくて、ただ真似されてくっついてくるだけで、無言のプレッシャーみたいなヤツだよね」
二人で意志を合わせてやるなら、息があって美しい走行に見える。だけれど、目の前の二台は敵対しているのに、息があったようにぴたりと美しい走行をしている。
意志を合わせていないのに、あれほど綺麗に見えるのは、ランエボに腕があるんじゃない。
「社長じゃなくちゃ、あれはきっとできない」
ランエボが抜こうとしたら英児父が同じ速度で息を合わせているように見せているだけ。すべては英児父の技――。
あれではランエボのドライバーも脅威を感じているだろうし、苛ついているはず。そうしてランエボを牽制してくれている。
英児父のスカイラインが出現した途端、ランエボも翔のMR2でさえ次の動きを止められてしまっている。ここにいる三台の統率を司っているのはまさに英児父のスカイラインだった。