愛シテアゲル
「こちらエンゼル。対向車線は大丈夫?」
小鳥は静かに補佐を務める。
『大丈夫だよ、小鳥。通過した車はいまのところナシ。タキさんもいま到着した。ここでみんなで待っている。何かあっても俺達もいるよ』
いつもの明るい武ちゃんの声が聞こえ、幾分かほっとした。
ついにエンゼルとランサーエボリューションが直線上りコースで横並びになる。
最後のカーブはエンゼルがアウトコース。インコースのランエボがスピードを落とす様子もなく、内回りのカーブを抜こうとしている。
翔がアクセルを強く踏む。……小鳥の足も何故か同じように踏み込んでいる、助手席で。
そう、ここ。ここで踏んで……、そう、並んだら……! 自分がハンドルを握っていたらこうする! 小鳥が思う運転を、翔もシンクロするようにやってくれている。
私たち、やっぱりひとつなんだ。
この二年、ほんとうに沢山の夜を車を通して過ごしてきた。
彼の愛車が、いまは私の愛車。そしていま、そんな彼とその車に乗って。夜空の下、こんな嫌なこともあるけれど、でも、ふたりで向こうに行こうって……。行こうって……。そんな気持ちもきっと一緒なんだと小鳥は思う。
小鳥の胸が熱くなるように、MR2のエンジンも最高潮に熱され、ここいちばんの唸り声をあげる。