愛シテアゲル


 内回りを一足先に抜けていこうとするランエボの先端、大回りのカーブをぶっちぎるMR2が捕らえる。

 ――並んだ! けっこうなスピード。

 だけれどハンドルを握っている翔の目線も、ハンドルを回す手と腕もぶれていない。
 アクセルを踏む長い足にも躊躇いがない。
 このカーブは、この角度の目線、この数値のスピード、この回転率。精密に計算をはじき出すロボットのような顔と姿。

 ここ一瞬で冴えわたる翔の運転。また小鳥はドキドキしていた。

 これが翔兄の素敵な姿。

 父ちゃんが動物みたいな勘でだけでビシバシとかっとばしていくのも、どこかにあっという間にさらわれるようでドキドキしてたまらなくなる。

 でも翔は父とは正反対。状況に合わせた理知的で緻密な判断で寸分違いなく打ち出された操縦をする。そこにはすごいという感動がある。

 小鳥のハートも、エンゼルのエンジンもヒートアップさせても、翔は冷ややかに静か。
 その目線が捕らえたとおりに、ついにエンゼルがランサーエボリューションをカーブの終点で抜いた!



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