愛シテアゲル
翔も怯まなず即座に言い返す。
「瀬戸田にはまったく関係がないことだろっ。それに瞳子は自分から望んで結婚したんだ」
みるみる間に男の顔が真っ赤になった。怒る人間が赤くなるってほんとうなんだと、その男の怒りがいかほどか目の当たりにした小鳥も絶句して動けない。
そしてそんな怒れる人間の底力もハンパじゃない。対等にみえた男同士の力に差が生まれる。
「ぐっ……、せ、瀬戸田……」
今度は翔の顔が激しく歪む。息苦しそうで、ランエボの男が本気で首を絞めにかかっている!
「違うだろ。望まない結婚を望んだんだろが! オマエがいつまでも車にばかりうつつを抜かしているから、仕方なく他の男と結婚したんだろうが!」
体格がよい瀬戸田という男が狂ったように翔を締め上げ、その襟元を激しく揺する。
それでも翔は息絶え絶えに言い返す。
「だ、だから……。あ、愛想を……尽かされたんだ……よ。ト、トウコは……、自分が、望む条件の……男と・・結婚したんだっ」
男の目がカッと雷神のように見開く。
「違うだろ、違うだろ!! 転属になって久しぶりにこっちに帰ってきたら、瞳子先輩はいつも赤ん坊を抱いて、ちかくの公園で泣いてばかりいる。あれのどこが望んだ結婚なんだ!! オマエがしっかりしていないかったから、ああなったんだろうが!!」
ほんとうにガンガンと翔の頭がルーフに打ち付けられている。
力で劣勢になった翔の真上にまた拳が振りかざされ、小鳥は叫ぶ。
「やめて!」