愛シテアゲル
小鳥はそっと顔を背けた。
「小鳥……。ありがとうな。でもな、俺のためにああいう無茶はもう二度としないでくれ」
そのまま小鳥は唇を噛みしめ、黙り込んでしまう。
「ほら。顔を上げろよ。湿布、貼ってやるから」
「いいよ。自分で貼るよっ」
彼の手をはね除けてしまう。急に、聞き分けのない小さな女の子のようになった小鳥を見て、翔は戸惑っていた。
だけど、すぐに。彼は致し方ないため息をつきながら、大人の毅然とした眼で小鳥を見つめ返している。
「瞳子のことだろ。ほんとうに、俺の人間関係に小鳥や店のみんなを巻き込んでしまって面目なく思っている」
彼がやっと小鳥の隣に腰をかけた。しかも、ぴったりと寄り添ってきて、小鳥を男の胸へと抱き寄せてくれる。
「瀬戸田という男は、俺と瞳子が入っていた映画サークルに一時いた男だよ。あんなに怒るほど、そう……瞳子を好きだったんだよ、アイツは」
小鳥が知らない、子供の頃の、お兄ちゃん達の昔話が始まった。