愛シテアゲル


 だから。だから。小鳥も彼の昔のことには首を突っ込んではいけない……。そう思って……。

 過去は過去、いま彼と一緒にいるのは自分なんだから、いまの二人を大事にすればいいだけで……。

 そう思っていたから。

「そこのカーテン。小鳥ならどう思う?」

 小鳥の苛みなどお構いなしに、唐突に翔がそんなことを言いだした。

 いったい何を考えているのだろう? オトナの彼の意図がわからない。でも小鳥はソファーの正面にあるカーテンを見つめる。

 ソファーと合わせたシックなブラウン一色のカーテン。

「ソファーと合っているよね」
「俺が初めて選んだカーテンだ」
「ふーん」

 それが? と、話の腰を折って話題を変える戦法なのかと、なにを考えているのか解らない翔を確かめた。でも彼は余裕の微笑みで、小鳥の目をしっかりと見つめ返す。

「それまでは、すっごい花柄のカーテンで、レースカーテンもフリフリの白い乙女なカーテンだった」

 ん? なんか変な話になってきたと小鳥はつい顔をしかめた。つまりそのカーテンって瞳子さんがこの部屋のために選んでいたという話になる。



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