愛シテアゲル


 頬がまだヒリヒリするけれど、もう平気。嫌な気持ちが心に渦巻いていたけれど、もうどこかにいっちゃった。

 いま小鳥の心に広がっていくのは、この人のことだけ。

「俺も、オマエのこと、すごく……」

 そこまで口にしてくれて、でもやっぱり彼はそこで黙ってしまう。

 でもそんな言葉じゃなくても、小鳥はもうわかっていた。
 照れた彼の顔が、とても優しく微笑んでくれているから。

 そんなお兄ちゃんが急に真顔になって、赤くなっているだろう頬をそっと撫でてくれる。

「もう二度と、こんなことするなよ」

 腫れた頬に熱い唇が触れた。

 小鳥も静かに頷く。労ってくれる唇が頬から耳に触れる。
 熱い息がもう……、優しいお兄ちゃんの息づかいではなかった。

 頬と耳を伝ってきた唇が、ゆっくりと小鳥の唇に重ねられる。
 優しい弾力がある男の唇を、小鳥からも愛した。

 許しを得たかのように、彼の唇も強く愛し返してくれる。




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