愛シテアゲル
まだ愛し方なんて知らない。
『愛している』なんて簡単に言えない。
でも。彼に愛されたい気持ちも、彼を愛し返したい気持ちも溢れている。
息が苦しくなってふいにつぶやくと、やっと彼が小鳥から離れ立ち上がった。
「シャワーを浴びてくる」
力が抜けて座ったままの小鳥を、翔はいつにない険しさで見下ろしてる。怖いくらいの眼差しに、小鳥は彼なりの覚悟を見た気がして静かにうなずいた。
そっと彼が奥へと消えていく。やがてシャワーの音。
もう緊張はない。でも胸はドキドキしている。
小鳥は立ち上がって、彼のベッドルームの入り口でその部屋を見渡した。
大きなベッドに無地のシンプルなシーツにベッドカバー。男らしい雰囲気なのに、優しくて甘い匂い。そう、よく馴染んでいる香りに、小鳥はほっと胸を撫で下ろし微笑むことができていた。
そっと瞼を閉じ、小鳥は心の中で一枚一枚脱いで素肌になろうとしていた。
その気持ちはもう子供ではなかった。
あの人の肌に触れたい。触れて欲しい。
そう心から熱く切望する『女性』だった。
「待ってる。小鳥も行ってこいよ」
バスタオルを腰にまいただけの彼が濡れ髪で出てきたので、そこはさすがに小鳥はドキリとしてしまう。
彼も既に『男』だった。
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