愛シテアゲル
15.いつのまにかレディ。(1)
いつから、子供ではなくなったの?
翔の目からその答を探そうとした。女になった今なら、それを知れる気がしたけれど、やっぱりわからない。
「なんだよ。その困った顔」
「いつまでも、お兄ちゃんに追いつけない子供だと思っていたから……。なんだか急に女になったみたいで変な気持ち、もあるの……」
いまなら満ち足りた微笑みを見せてくれるはずの彼女が、まだ心から微笑むことができないその訳を知り、翔の目が困惑している。でもすぐ迷いなく小鳥を見つめてくれる。
「小鳥は子供でも。いつかは大人の小鳥。俺は見えていたと思う」
「子供だけれど、いつかは大人。いつからだったの?」
「俺も、知らないうちに」
やっぱり大人の男はわからない言い方をすると、小鳥はきょとんと胸の中から彼を見上げた。
「そうだな。『いつからか』と強いていうならば、あの黒いワンピースだろうな。俺が東京土産でみつけてきた」
「まだ高校生だったのに、すごい大人っぽいワンピースをみつけてきてくれてびっくりしたんだけど」
英児父が仕入れで年に数回東京へ行く。その時、翔がお供でついていく。
高校三年生の時、そんな翔が『小鳥にお土産』と買ってきてくれたのが、大人っぽい黒のシャツワンピースだった。
サファリ風ポケットにシャツ衿。甘くないクールなデザインで、当時の小鳥には着こなせるものではなかった。
でも。大学生になってそのワンピースを着ると、誰もが『小鳥にピッタリ。よく似合っている』と絶賛してくれた。
ファッションにはうるさい本多のおじさんでさえ『それだよ、それ。それがお前にピッタリの雰囲気』と太鼓判の――。