愛シテアゲル
「クールな黒いワンピースを着て、MR2に乗ってアクセルを踏んで飛び出していくカノジョ。ああ、俺が思ったとおりの、あの時、見えたとおりの女になりそうだなあと……」
そこまで語ってくれた翔が急に、小鳥を腕の中へ固く固く抱きしめる。
「たぶん、この時。MR2に乗って飛びしていったあの日からだ。小鳥が大人の女になっていくんだと、子供ではなくなったのは――」
そ、そうだったんだ。やっとわかった。『いつから子供ではなくなっていたの?』。小鳥のこれまでの不安。まだ子供のはずなのに、ハタチの誕生日を前にして急にお兄ちゃんが小鳥を『女』として見るようになって、触れてくれるようになったと。
「ここ一年は、相当な我慢だったなー」
彼が笑い出した。そして抱きしめている小鳥の耳元に、翔は静かに鼻先を沿わせて……。
「こんな女っぽい匂いがするのに。もう小鳥が無防備すぎて。俺にも他の男にも」
お洒落な恰好じゃない、綺麗な容姿でもない、それでも魅惑的な女には、いい匂いがする雰囲気がある。英児父が時々言うことだった。それを彼が小鳥にはそれがあると耳元にキスをする。