愛シテアゲル


「そ、そうだったの?」

「そうだよ。車の中で二人きり。キスをしてくれた小鳥じゃない、俺の方が相当我慢していたんだよ。だいぶ前から小鳥を襲いそうで危なかったんだぞ。他の男と出かけていくのだって、女らしくないから誰も相手にしてくれないから大丈夫とか子供だから大丈夫とか、なのに長い足を出してでかけたり、胸元が良くわかる服を着ていったりして、気持ちも服装も無防備にもほどがある。本当にもう親父さんと一緒に、俺も心配で心配で。だから『せめて』夜のドライブは俺と一緒にいて欲しいと思って、一緒にいることだけは死守してきたんだからな」

「し、知らなかった。ほんとうにわからなかった。だってお兄ちゃん、ぜんぜんそんな顔しないし様子にも出さないし、一緒にいたってそんなことひとことも」

 だけれど、そんな落ち着きでクールな横顔に固めてしまうのが『この人』だと小鳥もわかっていた。だけれど、やっぱりわかりにくい!

「そんな、いつも会えるところはカノジョの親父さんでもある上司がいる職場で、カノジョにとっては家族がいる自宅。そこのお嬢さんを相手に仕事そっちのけでイライラする様子なんて見せられるもんか。しかも、大学生の若い男を相手に嫉妬丸出しにするなんてみっともない。好きな女にそんな小さい男だって見られたくないだろ。これでも必死だったんだからな、この二年」



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