愛シテアゲル
「あんなことをした男だけれど、学生時代から優秀な人だったみたいだよ。大阪にある大手商社でエリートになって活躍していると翔兄は聞いていたみたい」
「大阪の商社? 活躍してるエリート?」
そこで英児父の片眉がわずかに吊り上がった。
「本当は優秀な男で、それこそ瞳子さんが望んでいるような男になれたから自信を持って会いに行ったんじゃないかって翔兄が言っていたけれど……」
「学生時代以来なのにか? ずいぶんと唐突だな」
父が眉をひそめ、また考え込んでしまう。
「瞳子さんのことすごく好きだったんでしょう。うんと好きな人が幸せそうじゃなかったら、やっぱり腹が立つんじゃないの。なんかわかる気もして」
だがそこで英児父がバンと手のひらで机を激しく叩いた。その時、小鳥は既に下から元ヤン親父にギッと睨まれていた。
さすがにゾッとした小鳥はそのまま硬直してなにも言えなくなる。
「それはよう小鳥。てめえだけの『めでたい思想』だって覚えておけ」
うんと好きだった人への想いは、時が経っても大切なもの。
瀬戸田という男の人だって同じで、だから彼に少しだけ同情はしていた。
翔兄は黙って聞いてくれた。でも父ちゃんはそうではない。