愛シテアゲル


「それって……。じゃあ、瀬戸田って人は瞳子さんに近づいていたってこと?」

「もしかすると。瞳子さんが翔のところに急に逃げてきたのも、あいつにつけ回されていたかもしれねえな」

「え、でも。それなら旦那さんに相談すれば……」

 まだわからずに首を傾げると、そこは父がおかしそうにふと笑った。

「やっぱお前はまだ子供だな」

 そりゃ父ちゃんから見たらそうでしょうと小鳥はむくれた。せっかく今夜、大人の女になれたと思ったのに気分台無しだった。

「女心ってヤツだろう。それだけ……瞳子さんとご主人はまだ信頼関係が出来上がっていないんだろう。形だけの夫妻、だから相談ができず、できそうな翔のところに逃げてきたのかもしれねえ」

「そうだったのかな。それだったら瞳子さん、ひとりで留守番している時に赤ちゃんと二人で、心細かったのかな」

 そう呟くと、英児父がまた黙って小鳥を見つめている。

「でもよ。俺の娘は、そんなおめでたいとバカにされるほどの『純情バカ』で、父ちゃんはそっちのほうが嬉しい」

「父ちゃん……」

 世間では『おめでたいバカ』。でも父には『純情バカ娘』。



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