愛シテアゲル
「翔をかばおうと飛び込んでいったお前を見て『うわあ、やっぱり琴子の娘だわ』――と思ったよ」
あれ? あんなバカなことするのって、元ヤンの父ちゃんの方じゃないの? こんなところで唐突に『琴子に似ている』と言われて小鳥はまた首を傾げてしまう。
だけれど英児父は、その人のことを想っているのか、急に柔らかい眼差しになって静かに微笑んでいる。
「女ってスゲエなって。琴子だけじゃねえ、小鳥、お前からも感じるようになるだなんてな」
「お母さんって、そんな無茶する人に見えないんだけれど」
すると父が急にケラケラと笑い出した。
「そっか。娘のお前には『当たり前』に見えているのかもな。俺とか矢野じいなんて、ここに初めてきた琴子がやることに振りまわされたもんだよ。あの、俺の、スカイライン……あんなにして……」
「え、なにそれ! お母さん、ここに初めて来た時、父ちゃんのスカイラインになにしちゃったの?」
「いや、その。俺のスカイラインをさあ~、あはは!」
何を思い出したのか、英児父は一人で笑い転げて楽しそう。そんな父の想い出に娘の小鳥が入れる隙もなさそうだった。