愛シテアゲル

   いつのまにかレディ。(3)



「小鳥ちゃん!」

 玄関のドアを開けるなり、琴子母がリビングから駆け寄ってきた。

「お母さん。ごめんなさい」

 だけれど琴子母はなにもいわずに小鳥に抱きついてきた。

 背丈がある小鳥より小さな母。でも、ふんわり優しくて温かい肌が小鳥を包んでくれている。その背を小鳥は抱き返した。

「もう。エンゼルにぶつかってきたランエボの男とまた遭遇したなんてお父さんから聞いて、小鳥ちゃんが乗っている車がまた狙われて壊されるんじゃないかと、お父さんが助けに向かってもお母さん心配で心配で――」

 安心してくれたのか琴子母は両手で顔覆い、その目に涙を滲ませていた。

 龍星轟の男達が追っている危険な車、その危ない作戦に娘が巻き込まれて、その帰りを待っていることしかできない琴子母の気持ち。

 『待つことしかできない母の気持』なんだと申し訳なく思ったのも『一瞬』。

「いてもたってもいられなくなって、お母さんもゼットに乗ってダム湖まで追いかけていこうとしたのよ」

 えー!  小鳥は目を丸くして、しとやかな母を見下ろした。

 そんな、お母さんがそんなゼットをぶっ飛ばして娘の元に駆けつける姿なんて、想像できない!


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