愛シテアゲル
「そう言い出すと思った。小鳥らしいけど……。だけどな、誰だって真っ直ぐでいたい、だけど上手くいかないことが多いんだよ。わかるよな。花梨ちゃんの葛藤。それに、今夜は小鳥に自分のための時間にしてもらおうと、皆が小鳥の手を煩わせないよう早く切り上げてくれたことだってわかったんだろ。それなら、もう少し花梨ちゃんを信じて、様子を見ればいいじゃないか」
決して、激しく反論などしない優しい声に、小鳥の尖った気持ちもなだらかに収まっていく。
「うん、そうだね。そうする。幹事同士で帰っただけなのかもしれないし」
「いつもならエンゼルの助手席は花梨ちゃんなんだろう。今夜は小鳥を早く一人にしてあげたかったのかもしれないしな」
「うん。きっとそうだ。うん、きっと……」
まだ綺麗に不安を払拭できた訳ではないけれど。でも、やはり彼は大人だと思った。そして小鳥はこんな夜でも、今までどおり、その日にあったいろいろなことを彼に話して、そして困ったら相談して、そして教えてもらっている。
「良かった。俺の家に来るなり、急に玄関で泣き顔になってへたり込むから」
「ご、ごめんなさい。うん、でも、ハジメテの合い鍵。緊張してた」
笑うと、やっと翔兄も八重歯の笑みで声を立てて笑ってくれる。
「よーし。じゃあ、お兄ちゃんとハジメテの誕生日会をしよう」
そういうと翔は冷蔵庫を開けて、なにかの準備を始める。なんだろうと待っていると、小さなダイニングテーブルに、小さな苺の白いケーキが置かれた。