愛シテアゲル


 そして気がついた。そうなんだ。きっともう……『子供』とは思っていないんだ。『女性』として接してくれているんだと。

 そう思ったら、急に涙が溢れてきた。

「お母さん……お母さん……」

 ランエボの男も怖かったし、翔兄と一緒の戦いも怖かったよ。それにあの男の狂ったような暴力も怖かった。

 それに。大人のカラダになった幸せもあるけれど……。でも、それも怖かったよ。本当は。

 誰にも相談できない、男と女ふたりだけのヒミツは、大人だから一人で決めて一人で向き合わないといけない。

 もう甘えられない。彼を好きになって、彼の大人の恋人になることは、両親に言えいないことが増えること。そして本当に、この人達から私は離れていくんだと急に思えたから。

「湿布、貼ってあげるからいらっしゃい」

 結局、この腫れた頬を最後に労ってくれたのは母の手だった。

 あれ? もしかして翔兄も父ちゃんも、そう思って最後にお母さんに手渡してくれたのかな?
 そんなふうにすら思えた。
 湿布を貼る琴子母が最後に笑った。

 相変わらずやんちゃでも、いつのまにかレディさんね――と。



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